産業廃棄物処理・運搬及び処分委託契約書について

【概要】

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 産業廃棄物収集・運搬及び処分委託契約は、委託者(排出事業者)が受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)に対し、産業廃棄物の収集・運搬及び処分を委託する場合に締結します。

 法令上、産業廃棄物を排出した事業者は、それらの収集・運搬及び処分を第三者に委託するときは、収集・運搬及び処分業務を行おうとする行政区の許可を受けた者に委託しなければなりません(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、「廃棄物処理法」といいます。)12条5項、14条12項、同条1項、6項)。その際、事前に、書面で委託契約を締結したうえで、その書面を契約終了日から5年間保存する義務を負います(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号、同5号、廃棄物処理法施行規則8条の4の3)。

 ここでは、産業廃棄物の収集・運搬及び処分を同一の事業者に委託する場合を想定して、産業廃棄物収集・運搬及び処分契約書について解説します。

 なお、産業廃棄物の収集・運搬及び処分をそれぞれ異なる事業者に委託することもできます。この場合は、廃棄物収集・運搬業者との間で「産業廃棄物収集・運搬委託契約」を、廃棄物処分業者との間で「産業廃棄物処分委託契約」を締結します。

✔ 目次

  1. 受託者の事業範囲
  2. 産業廃棄物の種類・数量・単価
  3. 輸入廃棄物の有無
  4. 処分の場所・方法・処分能力
  5. 最終処分の場所・方法・処分能力
  6. 収集・運搬過程の積替保管
  7. 適正処理に必要な情報の提供
  8. 性状等の変更による通知
  9. マニフェストに関する義務
  10. 委託業務終了報告
  11. 業務の一時停止
  12. 代金
  13. 再委託
  14. 期間内解約

1. 受託者の事業範囲

⑴  受託者の事業範囲

 法令上、「受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)の事業の範囲」を契約に定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第3号)。

 これを記載しなかった場合や、記載内容が実際と異なるときは、罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法26条1号)。

 また、産業廃棄物の収集・運搬業と産業廃棄物の処分業は、それぞれ異なる許可が必要です。産業廃棄物の収集・運搬及び処分業を委託する場合は、いずれの事業範囲についても記載する必要があります。

⑵ 許可事項の変更時の通知義務

 受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)が許可を受けていない範囲の運搬・処分業務を委託した場合、委託者(排出事業者)に罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法26条1号)。

 そのため、委託者としては、受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)の許可事項に変更があったときに、変更内容を確認できるよう、受託者に変更後の許可証の写しを提出する義務を定めるのが有利です。

2. 産業廃棄物の種類・数量・単価

 法令上、「委託する産業廃棄物の種類及び数量」を契約に定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号イ)。
 これを記載しなかったときや、記載内容が実際と異なるときには、罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法26条1号)。

3. 輸入廃棄物の有無

 法令上、許可を受けて輸入された産業廃棄物の処分を委託する場合、「許可をうけて輸入された廃棄物であること」を契約に定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号ニ)。
 これを記載しなかったときや、記載内容が実際と異なるときには、罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法26条1号)。また、廃棄物を輸入する場合、環境大臣の許可が必要です(廃棄物処理法15条の4の5第1項)。

 輸入廃棄物の処分を委託しない場合は、その旨を定めるのが安全です。

4. 処分の場所・方法・処分能力

 法令上、「処分する場所の所在地」、「処分の方法」及び「処分施設の処理能力」を契約に定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号ハ)。 
 これらを記載しなかった場合や、記載内容が実際と異なるときには、罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法26条1号)。

5. 最終処分の場所・方法・処分能力

 法令上、「最終処分する場所の所在地」、「最終処分の方法」及び「最終処分施設の処理能力」を契約に定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号ホ)。
 これらを記載しなかった場合や、記載内容が実際と異なるときには、罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法26条1号)。

6. 収集・運搬過程の積替保管

 法令上、産業廃棄物の積替え・保管(運搬の途中で、分別などを行うために、廃棄物を運搬車からおろして、一時的に保管と積替えを行うこと)を伴う運搬を委託する場合、契約書に、「積替え・保管する場所の所在地」「保管できる産業廃棄物の種類」「積替え保管のための保管上限」を定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第4号)。
 また、安定型産業廃棄物について積替え又は保管を伴う運搬を委託するときは、「他の廃棄物と混合することの許否等に関する事項」を定めることも義務づけられています(廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第5号)。
 安定型産業廃棄物とは、有害物質や有機物等が付着していない、事業活動に伴って生ずる産業廃棄物で、安定5品目(廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず・陶磁器くず、がれき類)、及びこれらに準ずるものとして環境大臣が指定した品目のこと(廃棄物処理法施行令6条1項3号イ)をいいます。
 積替え・保管を伴う運搬を委託しない場合は、このことを明確にするため、「積替え・保管をしない」と定めるのが安全です。

7. 適正処理に必要な情報の提供

 法令上、産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合、適正な処理のために次の事項を契約書に定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第6号)。

・産業廃棄物の性状・荷姿に関する事項

・通常の保管状況の下での腐敗、揮発などの産業廃棄物の性状の変化に関する事項

・他の廃棄物との混合などによって支障をきたす事項

・廃パーソナルコンピュータなどの一定の産業廃棄物である場合は、日本工業規格の含有マークの表示に関する事項

・石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨

・その他注意すべき事項

 これを記載しなかったときや、記載内容が実際と異なるときには、委託者(排出事業者)に罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法26条1号)

8. 性状等の変更による通知

 法令上、産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合、適正な処理のために「産業廃棄物の性状」「通常の保管状況の下での腐敗、揮発などの産業廃棄物の性状の変化」などの一定の事項(産業廃棄物処理施行規則8条の4の2第6号)に変更があったときの伝達方法を、契約書に定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第7号)。

9. マニフェストに関する義務


 産業廃棄物の運搬・処分を委託するときは、産業廃棄物の引渡しと同時に受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)に一定の事項を記載した産業廃棄物管理票(マニフェスト伝票)を交付しなければなりません(廃棄物処理法12条の3第1項)。
 これは、電子情報処理組織を使用する方法によって代用することもできます(廃棄物処理法12条の5第1項)。マニフェストの不交付、記載義務の違反、虚偽の記載があるときは、委託者(排出事業者)に罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法27条の2)。  
 委託者(排出事業者)としては、産業廃棄物管理票(マニフェスト伝票)に不備があるのにもかかわらず、そのまま廃棄物の運搬・処分が進められると、運搬・処分の状況を適切に管理できません。そこで、マニフェストに不備があることを発見したときは、受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)に廃棄物の引取りの停止や修正をさせるなどの対応を定めるのが有利です。

10. 委託業務終了報告


 法令上、契約書に、「収集・運搬及び処理業務終了時の受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)の委託者(排出事業者)への報告に関する事項」を定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第8号)。  
 委託者(排出事業者)としては、委託した産業廃棄物の収集・運搬及び処分が終了した時期を適切に把握するため、受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)に業務終了報告書を提出させるのが安全です。

11. 業務の一時停止


 法令上は、受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)は、廃棄処理法施行規則10条の6の2に定める事由が生じたときは、そのことを同16条の6の3に定める方法により、委託者(排出事業者)に書面で通知しなければなりません(廃棄物処理法14条13項、廃棄物処理法施行規則10条の6の3、同16条の6の2)。  委託者(排出事業者)としては、業務を一時停止する義務に加えて、このような委託者(排出事業者)の通知義務を確認的に定めるのが安全です。

12. 代金


 ⑴ 法令上、契約書に、「受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)が委託者(排出事業者)に支払う料金」を定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第2号)。 
 これを記載しなかった場合や、記載内容が実際と異なるときは、委託者(排出事業者)に罰則が課されるおそれがあります(廃棄物処理法26条1号)。

 ⑵ 代金変更の手続き 経済情勢や、産業廃棄物の性状等の変更、業務の一時停止などの事情により、当初の代金額が不適切となった場合に備えて、代金額を変更するための手続きを定めるのが安全です。

13. 再委託


 基本的には、受託者(産業廃棄物収集・運搬及び処分業者)は、産業廃棄物の収集・運搬および処分を他人に委託してはいけません(廃棄物処理法14条16項)。
 ただし、受託者(廃棄物収集・運搬及び処分業者)は、次の要件をみたすときは、再委託することができます(廃棄物処理法施行令6条の12、廃棄物処理法施行規則10条の7)。

⑴委託者(排出事業者)の承諾書面を得ること
⑵委託者(排出事業者)が承諾書面の写しを5年間保存すること(廃棄物処理法施行令6条の2第6号、廃棄物処理法施行規則8条の4の4)
⑶再委託に関して、法定記載事項(廃棄物処理法施行令6条の12)を記載した文書を交付すること
⑷法定基準(廃棄物処理法施行令6条の2)に従った再委託契約書を作成し、契約終了後5年間保存すること  

委託者(排出事業者)としては、法令遵守を徹底してもらうために、再委託の禁止について契約で定めるのが安全です。

14. 期間内解約

⑴ 期間内解約

 契約期間中に取引を終了できるようにするために、期間内に解除することができる旨を定めるのが有利です。

 もっとも、継続的な取引関係にあったときは、取引が継続することを信頼していた相手方に大きな損害を与えるため、中途解約できないことがあります。中途解約をするときは、早めに伝えて相手方に損害が生じないように配慮するのが安全です。

 法令上、契約書に、「契約を解除した場合の、未処理の廃棄物の取扱いに関する事項」を定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第9号)。

⑵ 期間内解約時の未処理の廃棄物の取扱い

法令上、契約書に、「契約を解除した場合の、未処理の廃棄物の取扱いに関する事項」を定めることが義務づけられています(廃棄物処理法12条6項、廃棄物処理法施行令6条の2第4号へ、廃棄物処理法施行規則8条の4の2第9号)

  • 以上、業廃棄物処理委託契約書の書き方についてポイントをまとめました。これから契約書作成を行う際は、ぜひ参考にしてみてください!

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