
【概要】
工事請負契約書とは、注文者が請負人に対して何らかの工事(建物の新築や増改築など)を発注し、請負人がこれを受注する内容の契約書です。
工事請負契約には、建設業法による規制が適用されます。建設業法では、工事請負契約に定めるべき事項(建設業法19条1項)や、当事者が負う義務などが定められています。
工事請負契約を締結する際には、建設業法の規制内容を踏まえた内容になっているかどうか、十分注意する必要があります。
ここでは、工事請負契約書を締結する場合に、注文者と請負人双方の立場から、確認すべき契約書の条項のポイントを解説します。
✔ 目次
1. 建設業法の適用対象となる建設工事とは
2. 工事請負契約書に定めなければならない事項(法定記載事項
3. 各種標準請負契約約款
4. 「工事請負契約書」の性質
(1) 工事請負契約の目的・性質
(2) 仕様の変更
(3) 監理者による監理について
(4) 支給材料等について
(5) 再委託について
(6) 検査と引渡し
(7) 法定検査について
(8) 契約不適合責任について
(9) 損害賠償責任
(10) 契約終了時の措置
(11) その他
1. 建設業法の適用対象となる建設工事とは
建設工事とは、建設業法では、土木建築に関する次のような工事をいいます(建設業法2条1項)。
土木一式工事/建築一式工事/大工工事/左官工事/とび・土工・コンクリート工事/石工事/屋根工事/電気工事/管工事/タイル・れんが・ブロツク工事/鋼構造物工事/鉄筋工事/舗装工事/しゆんせつ工事/板金工事/ガラス工事/塗装工事/防水工事/内装仕上工事/機械器具設置工事/熱絶縁工事/電気通信工事/造園工事/さく井工事/建具工事/水道施設工事/消防施設工事/清掃施設工事/解体工事 |
「建設工事」というと、建物を建設するような非常に大掛かりな工事が頭に浮かびますが、内装のリフォームや、エアコン設置工事のような身近な工事にも適用されますので注意が必要です。ただし、建設工事の規模等に応じて、建設業法上課せられる義務が異なります。
2. 工事請負契約書に定めなければならない事項(法定記載事項)
建設工事請負契約においては、以下の事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならなりません(建設業法19条1項)。なお、4(11)で述べるとおり、一定の要件を満たせば、書面契約に代えて、電子契約による締結も認められています(建設業法19条3項)。
① 工事内容② 請負代金の額③ 工事の着手の時期及び工事完成の時期④ 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容⑤ 前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法⑥ 設計変更・工事着手の延期・工事の中止の申出があった場合における、工期の変更・請負代金額の変更・損害の負担及びそれらの額の算定方法⑦ 天災その他不可抗力による、工期の変更・損害の負担及びその額の算定方法⑧ 価格等の変動若しくは変動に基づく、請負代金の額又は工事内容の変更⑨ 工事の施工により、第三者に対して支払う損害賠償金の負担⑩ 注文者が資材を提供したとき・機械を貸与するときは、その内容・方法⑪ 注文者による完成検査の時期・方法、引渡しの時期⑫ 工事完成後における、請負代金の支払の時期・方法⑬ 契約不適合責任、又は契約不適合責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容⑭ 債務不履行の場合における遅延利息・違約金その他の損害金⑮ 工事請負契約に関する紛争の解決方法⑯ その他国土交通省令で定める事項 |
3. 各種標準請負契約約款
国土交通省や業界団体などにより、色々な工事契約を念頭に様々な標準約款が作成され、使われています。
特に、国土交通省に設置された中央建設業審議会は、建設業法34条2項に基づいて「建設工事標準請負契約約款」を公表し、工事請負契約の当事者に対してその履行を勧告しています。また、民間約款としては、「民間(七会)連合協定工事請負契約約款」も伝統的によく使われています。
建設工事標準請負契約約款は、建設工事についてのルールを詳細に定めて、後日の紛争を予防することを目的としています。また、当事者間の力関係の差を反映して、過度に偏った内容の契約が締結されないようにすることも、建設工事標準請負契約約款の主要目的の一つです。
標準請負契約約款と異なる契約上の定めはできますが、特に注文者や元請負人の立場では、過度に自己に有利な契約内容にして建設業法に違反したり、請負業者や下請負業者における法令違反の誘因になってしまったりという事態は避けなくてはなりません。
(参照:「元請負と下請負人間における建設業法令遵守ガイドライン(国土交通省不動産・建設経済局建設業課)」や「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課)」)
上記国土交通省のガイドライン等も参照のうえ、トラブルになるリスクを抑え、万一トラブルが起こってしまっても、契約書の取り決めに基づき早期に解決できるよう、ご自身が発注する請負工事の性質や内容を踏まえながら契約書を作成していきましょう。
4. 当方が使用するひな形の「工事請負契約書」の性質
当方が使用するひな形は、上記2の工事請負契約に定めなければならない事項を網羅しつつ、建物を建設するような大掛かりな工事ではなく、より小規模な工事にも使いやすいようなコンパクトなものとなっています。
(1) 工事請負契約の目的・性質
当方が使用するひな形は、「別紙」に以下のような項目を記入する方式としています。
工事名/工事内容/工事場所/工事責任者/工期/工事を施工しない日又は時間帯/工事代金/工事代金の支払日/備考欄 |
工事請負も、民法上の「請負」であり、契約に定めのない事項については、民法の「請負」に関する規律が適用されます。
民法上は、請け負った仕事が完成して初めて報酬請求権が発生しますが、工事代金は、大掛かりな工事ですと、「契約時・着工時・引渡時」等、契約により前払の定めがされることもよくあります。このような場合、建設業法19条1項5号により、支払の時期と方法を契約書に定めなくてはなりませんので、別紙の工事代金欄は、3回に分けた前払の場合の記載例が載っています。
工期の設定にあたっては、2020年10月施行の建設業法改正により定められた「著しく短い工期の禁止」(建設業法19条の5)に違反しないよう注意が必要です。また、「工事を施工しない日又は時間帯」も、同じく2020年10月施行の建設業法改正により追加された比較的新しい法定記載事項(建設業法19条1項4号)です。
(2) 仕様の変更
災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として、工事に着手する前に契約書を締結する必要がありますが、例えば、リフォーム工事において、「壁を剝がしてみたら想定以上に劣化していて部材の交換が必要だった」、「やっぱりドアは茶色じゃなくて白に変更したい」など、工事に変更はつきものです。
そこで、建設業法19条2項は、変更時にも書面を取り交わすことを求めています。当初契約書において契約内容をしっかり定めても、その後の変更契約が口約束で行われれば、当該変更契約の明確性及び正確性が担保されず、紛争を防止する観点からも望ましくないためです。
当方が使用するひな形の「注文者有利」の契約書においては、必要に応じて仕様書の内容を変更することができる(ただし、代金は協議して調整する)ようにしています。
一方、注文者にたくさん変更をされると請負人としては大変ですから、「請負人有利」の契約書においては、変更をするためには「変更提案書」を交付するものとするなど、変更をするためのプロセスを重くしています。
「中立」の契約書においては、一定の場合に請負人が工期の延長を請求することができることを明記する、工事代金の変更の基準を記載するなどしています。
(3) 監理者による監理について
当方が使用するひな形の第5条に「監理」という言葉が出てきますが、「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること(建築士法2条8項)をいいます。
建築基準法により、一定の建築物(建築士法3条1項、3条の2第1項、3条の3第1項)の新築工事は、「建築士」の設計及び監理なしに行うことは禁止されており(建築基準法5条の6第1項、4項及び5項)、工事監理者を定めることは建築主の義務となっています。
また、「新築」以外の工事であっても、上記規定の適用については、建築物を増築し、改築し、又は建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をする場合においては、当該増築、改築、修繕又は模様替に係る部分を新築するものとみなされています(建築士法3条2項)。
建築士には、「一級建築士」、「二級建築士」及び「木造建築士」の3種類があり、建物の種別や平米数等により必要な資格が異なりますので、行いたい工事内容に照らし、適切な監理者の選定及び契約が必要です。
(4) 支給材料等について
注文者支給材料の使用(いわゆる「施主支給」の場合)は、請負人ではなく注文者が材料・設備等を購入して請負人に取り付けを依頼するもので、近年、一般の注文住宅においても一般的になってきています。
比較的安価に気に入った材料を使えるメリットがありますが、その受入や品質確認については注文者の責任で行うこととなっており、請負人による保証の対象外となることに注意する必要があります。
なお、「注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め」を請負契約の内容として記載する必要がありますので注意が必要です(建設業法19条10号)。
(5) 再委託について
建設業法22条により、一括下請負(受注した建設工事を一括して 他人に請け負わせること)は、注文者の請負人への信頼の保護、中間搾取の防止などの観点から原則として禁止されています(一定の重要建物を除き注文者の同意があれば一括下請負も可能。)。
一方で、工事一般については、注文者と直接契約する請負人がすべて施工をするケースは少なく、何らかの形で再委託が行われるのが通常ですから、下請負があることを前提に、下請負業者の管理を含めて請負人が責任を負う体制を確認すべきでしょう。
(6) 検査と引渡し
注文どおり(両者で合意した設計図書等どおり)にできあがったかどうかを確認するのが検査です。
工事代金の前払いをするとしてもそれはあくまで前払いであり、請負人としては注文どおりの仕事をして初めて報酬がもらえるのですから、注文と異なるところがあれば修補等をする必要があります。注文どおりであることが検査で確認されれば、工事目的物を請負人が注文者に引渡して、同時に注文者が請負人に工事代金を支払うのが一般的です。
なお、注文との相違(不備)が軽微な場合等は、やり直しをしないでそのまま引渡し、代金の減額で調整することもあります。
(7) 法定検査について
一定規模以上の建築物を建築しようとする場合には、建築主は工事に着手する前に、建築主事又は指定確認検査機関に「確認申請書」を提出し、その計画が建築基準法等の基準に適合していることの行政上の確認を受けなければなりません。リフォームであっても構造や規模によっては建築確認申請が必要な場合があります。
建築基準法等の基準に適合していることが確認されれば、「確認済証」が交付されます。
(8) 契約不適合責任について
① 契約不適合責任期間(いわゆる「請負人の担保責任」に関する民法改正)
令和2年(2020年)4月1日施行前の民法(以下「改正前民法」といいます。)には、以下のような請負人の担保責任に関する規定がありました(637条、第638条)が、現在は改定又は削除されました。
改正前民法637条・638条(概要) 原則 目的物の引渡し等から1年以内の権利行使が必要 例外 ① 建物等の建築請負では引渡しから5年以内 ② その建物等が石造、金属造等の場合は引渡しから10年以内 |
現行民法637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限) 1. 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。 2. 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。 |
これは、請負の目的物が契約に沿ったものでない場合、注文者は請負人に対し、いつまで責任追及できるかという問題です。
改正前民法は、引渡しからカウントして期限を設けていましたが、現行民法においては、「注文者がその不適合を知った時から一年以内」とされました。
これは、注文者が契約不適合を知らないまま制限期間が経過してしまう恐れがあること、制限期間内に権利行使までするのは注文者の負担が重いからだとされています(判例は、「売主に対し具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の根拠を示す」必要があるとしています。)(参照:民法改正部会資料75A23頁)。
もっとも、この場合でも、消滅時効の一般原則の適用を排除するものではないとされていますので、責任期間は永久ではなく、債権に関する消滅時効の一般原則による権利行使可能時、すなわち、引渡時から10年が上限となるとされています(民法166条)。
一方で、「①目的物の引渡し後は履行が終了したとの期待が売主に生ずることから、このような売主の期待を保護する必要があること、 ②物の瑕疵の有無は目的物の使用や時間経過による劣化等により比較的短期間で判断が 困難となるから、短期の期間制限を設けることにより法律関係を早期に安定化する必要 がある」等の意見も有力にありました。
② 契約不適合責任期間(国土交通省の標準約款等における規律)
上記2で述べたように、国土交通省に設置された中央建設業審議会は、建設業法34条2項に基づいて「建設工事標準請負契約約款」を公表しており、民法改正を受けて、工事の契約不適合責任を標準約款においてどのように規律するかが議論されています。
結論としては、引渡しからの期間制限が維持されました。期間についての具体的な条文(民間建設工事標準請負約款(乙))は以下のとおりとなっています。
第35条(契約不適合責任期間等) 1. 発注者は、引き渡された工事目的物に関し、第十八条第二項に規定する引渡し(以下この条において単に「引渡し」という。)を受けた日から二年以内でなければ、契約不適合を理由とした履行の追完の請求、損害賠償の請求、代金の減額の請求又は契約の解除(以下この条において「請求等」という。)をすることができない。 2. 前項の規定にかかわらず、建築設備の機器本体、室内の仕上げ・装飾、家具、植栽等の契約不適合については、引渡しの時、発注者が検査して直ちにその履行の追完を請求しなければ、受注者は、その責任を負わない。た だし、当該検査において一般的な注意の下で発見できなかった契約不適合については、引渡しを受けた日から一年が経過する日まで請求等をすることができる。 3~9 〔略〕 |
民法改正後もこのような規定にしたことについては、中央建設業審議会から以下のように説明されています(参照資料:令和元年12月13日改正に関する資料 「改正の内容について」)。
<理由>
①建築工事については、通常、完成時に厳重な確認が行われ、不適合部分はほとんど修補されて引渡しが行われるのが通常であること
②長期間経過すればそれが施工上の瑕疵か使用上の瑕疵かをめぐって争いを生じ、請負者が速やかに修補請求に応じることも期待しがたいこと
③請負者を長期間不安定な地位に置くことも過酷であること
④設備機器や家具等はこれまでもその性質により担保期間が縮減されてきた
<判断>
現行の約款において設けられている期間制限は、建設工事の特性から導かれるものであり、民間工事の建築設備の機器、室内装飾、家具等(民間甲)や造作、装飾、家具(民間乙)の契約不適合については、 これらの品質が維持される期間を瑕疵担保期間としたものである。
この実態は、民法改正後であっても変わるものではないため、改正後の約款において、引き続き、契約不適合責任に関し期間の制限を設けることは、消費者契約法10条の規定には違反しない。
③ ひな形の例
当方が使用するひな形は、注文者有利の場合と中立の場合を規定しています。
いずれの形式で規定するにしても、トラブル防止・早期かつ確実な権利行使の観点からは、注文者は、契約不適合責任の期間の長短のみに捉われないことが必要でしょう。契約不適合責任期間をただ長くしたとしても、結局、引渡し時からの不適合のあるなしで揉めてしまい、トラブルが解決しないとすれば、あまり意味があることではありません。
契約不適合リスクは契約条項によってのみ低減できるわけではありません。
契約内容の詳細や変更を把握し明確にエビデンスに残し、施工途中においても適宜に進捗を確認し、必要に応じて早めに修補させること、引渡し時の検査をしっかりと行い修補させること、そもそも、施工実績やアフターフォローの体制などから誠実に対応してくれるであろう請負人を選ぶこと、これらによってもリスク低減はできますので、工事の内容や契約全体のバランスを考えて交渉されるのがよいのではないでしょうか。
(契約不適合責任期間等) 1. 注文者は、引き渡された工事目的物に関し、第10条第6項に規定する引渡し(以下この条において単に「引渡し」という。)を受けた日から2年以内でなければ、契約不適合を理由とした履行の追完の請求、損害賠償の請求、代金の減額の請求又は契約の解除(以下この条において「請求等」という。)をすることができない。 2. 前項の規定にかかわらず、建築設備の機器本体、室内の仕上げ・装飾、家具、植栽等の契約不適合については、引渡しの時、注文者が検査して直ちにその履行の追完を請求しなければ、請負人は、その責任を負わない。ただし、当該検査において一般的な注意の下で発見できなかった契約不適合については、引渡しを受けた日から1年が経過する日まで請求等をすることができる。 3~9 〔略〕 |
④ (ご参考)民法の適用除外に関する規定
契約不適合責任の規定等について、各種標準契約には、「民法第637条第1項の規定は、契約不適合責任期間については適用しない。」(民間建設工事標準請負約款(甲)44条7項、(乙)35条7項、民間(七会)連合協定工事請負契約約款27条の2第7項)と規定されています。
※民法637条1項
前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
これは、これらの契約書が、契約不適合責任期間について、「引渡しから2年」等、契約不適合責任期間を民法の定める時効期間より短期にしたために、民法637条1項の「注文者がその不適合を知った時から一年以内に通知」すべき旨の規定の適用はないことを明確にしたものとされています。
では、このような適用除外の規定を入れなかった場合、「責任期間は引渡しから2年」と明確に規定した場合でも、契約書に記載がないにもかかわらず、「注文者がその不適合を知った時から1年」の民法の規定が適用されてしまうのかというと、そういうわけではありません。
「責任期間は引渡しから2年」と明確に規定した以上は、契約当事者の通常の合理的な意思としては、「注文者がその不適合を知った時から1年」を適用する意思があるとは通常解釈されないものと思われます。
契約の解釈においては、まずは契約に現れた当事者の合意が優先されます(民法91条:法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。)。
また、当事者が特に定めなかった事柄については、特別な慣習がある場合は、任意規定に優先して慣習によって契約内容が補充されます(民法92条:法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。)。
任意規定である民法の規定は、契約当事者が特に定めなかった場合にそれにより補充されるものですので、契約書に記載があれば、当然、その内容が優先されます。ただし、契約書に「記載していない」内容について、思っていた内容と異なる効果を確実に発生させたくないときには、このような適用除外規定を意識して置いた方がよいでしょう。
(9) 損害賠償責任
工事請負契約においては、納期遅延の場合の違約金を規定することが多くあります。
注文者にとっては引渡しが遅れたことによる損害の発生・その額を証明することは難しいことからメリットのある規定であり、請負人にとっては、引渡しが遅れた場合に賠償すべき損害の範囲を限定できるメリットがあります。
(10) 契約終了時の措置
① 途中成果物に関する民法の規律(割合的報酬)
現行民法634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬) 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。 |
「請負の報酬は、完成した仕事の結果に支払われるものとされ、 中途で契約が解除されるなどした場合については、特にルー ルを設けていない。 他方で、判例は、請負契約が中途で解除された事案においても、注文者が利益を得られる場合には、中途の結果についても、 利益の割合に応じた報酬の請求は可能と判断」されており「 中途の結果について報酬が請求され、紛争に発展するケース は、実際にも少なくないことから、明確なルールが必要」との観点で新設された規定です。
(11) その他
当方が使用するひな形は、書面による契約を前提としていますが、建設業法では、相手方の承諾を得るなど一定の条件を満たした場合は、相手方にあらかじめ同意を得ておくことで、契約書を電子的に作成する(電子契約の方法による)ことも認められています(建設業法19条3項)。
電子契約で用いる仕組みについては、細かな技術的要件が定められているものの(建設業法施行規則13条の4第2項)、事業者によるグレーゾーン解消制度の積み重ねもあり、クラウドサイン等の主な電子契約サービスは、当該技術的要件を満たすと考えられています。
以上
- 以上、建設工事請負契約書についてポイントをまとめました。これから契約書作成を行う際は、ぜひ参考にしてみてください!
契約書の作成に不安があれば、気軽に問い合わせてください!