物流委託契約書について

【概要】

 物流委託契約は、委託者が受託者に対し、物流に関する業務(配送・荷受業務、入庫業務、棚卸業務、返品回収業務等)を委託する場合に締結します。

 物流に関する業務は法律行為ではなく、「法律行為以外の事務」に当たるため、物流委託契約は準委任契約に該当します。そのため、民法の委任契約に関する規定が準用されます(民法656条、643条~655条)。また、何らかの成果物の完成義務が課されている場合は、請負契約に該当し、民法の請負に関する規定が準用される可能性があります(民法632条~642条)。

 ここでは、請負型、準委任型を問わず、物流委託契約を締結する場合に、契約書に定めるべきポイントを解説します。

✔ 目次

  1. 業務遂行方法の改善
  2. 善管注意義務
  3. 業務中に作成した資料等の提出義務
  4. 資料の提供
  5. 資料の返還
  6. 資料の管理
  7. 業務遂行場所
  8. 労働災害
  9. 物品の滅失・紛失時の措置
  10. 事故等発生防止義務
  11. 設備機器等の損傷時の対応
  12. 業務遂行不能時の対応
  13. 業務従事者等に対する教育・指導等
  14. 業務従事者等の変更
  15. 労務管理
  16. 設備・備品等の制限
  17. 立入検査
  18. 保証
  19. 損害賠償保険
  20. 受託責任範囲
  21. 受領書等回収義務
  22. 配車
  23. 車両の故障時の措置
  24. 運送指示の急遽変更に対する対応
  25. 入庫業務
  26. 在庫差異責任
  27. 返品回収業務

1. 業務遂行方法の改善

 受託者は雇用契約の当事者である労働者とは異なり、委託者の指揮命令下にはないので、基本的には自らの業務遂行方法を決めることができます。

 そこで委託者としては、必要に応じて、受託者により適切かつ効率的に業務を遂行してもらうために、「業務遂行方法の改善の協議を行い、受託者はそれに従って改善する」と定めるのが有利です。

2. 善管注意義務

 民法では、準委任契約の受任者は、善管注意義務を負うと定められています(民法656条、644条)。

 善管注意義務とは、その人の社会人としての能力などを考慮して、通常要求される注意義務をいいます。「自己の財産におけるのと同一の注意義務」(その人の注意能力に応じた個別具体的な注意義務)と対比される概念です。相手方の過失(不注意)によって損害が生じた場合に、過失があったかどうかの前提として、その人にはそもそも、どの程度の注意義務が課せられているのかが問題となります。この注意義務の程度として比較的高度なものを善管注意義務といいます。

 このように、受託者が法律上負っている義務ではありますが、委託者としては、受託者に高度の注意義務をもって業務を遂行してもらうために、「受託者は善管注意義務を負う」と確認的に定めるのが安全です。

3. 業務中に作成した資料等の提出義務

 民法上は、受託者が業務中に作成した資料を委託者に提出する義務があるかどうかは明確に定められていません。

 委託者としては、受託者が業務中に作成した資料の中に、自らに有利な情報が含まれている可能性があるため、「受託者は、業務の遂行の過程で文書等を作成した場合は、委託者に報告し、委託者の求めに応じて引き渡す」と定めるのが有利です。

4. 資料の提供

 受託者が、委託者に対して業務を遂行する上で必要な資料等を求めることができるか否かをめぐる争いを防ぐためには、契約で定めるのが安全です。

 民法では、このように委託者が受託者に協力する義務については明確に定められていません。

 受託者としては、業務を遂行する上で必要な資料があるときは、委託者に求めることができるように、「受託者は、本業務を遂行する上で必要な資料等を提供するよう、委託者に求めることができる」と定めるのが有利です。

5. 資料の返還

 民法では、準委任における受任者は、「処理するにあたって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない」と定められており(民法656条、646条1項)、この引渡しの時期については、特約があればそれにより、特約がなければ委任終了の時であるとされています。委託者から提供された資料は、この「業務中に受け取ったもの」にあたるため、委託者に返さなければなりません

 委託者としては、委任終了時等のみならず、委託者が要求した時には返還を受けられるよう、「本契約が終了したとき、提供資料等が不要となったとき、又は委託者が要求したときに、委託者の指示に従い、提供資料等を委託者に返還等する」と定めるのが安全です。

 他方で、受託者としては委託者が要求したときにいつでも資料等を返還しなければならないとすると、業務を思い通りに遂行できなくなる恐れがあるため、このような定めは削除するか、削除が難しい場合は、資料等の返還義務が生じる場合を「本契約が終了したとき、又は、必要資料等が本業務の遂行上不要となったとき」に限定して定めるのが有利です。

6. 資料の管理

⑴ 資料の複製・改変

 委託者が受託者に対して提供した資料について、特に何も定めがなかった場合、資料に関する委託者の権利に反しない限り、受託者はこれを自由に複製・改変することができます。

 ここで、複製とはすでにある著作物から、別の著作物をつくりだすことをいいます。印刷、写真、複写、録音、録画などがこれにあたります。スキャナーで電子データにする行為やクラウドサービスのサーバーにアップロードする行為も複製にあたります。

 委託者としては、受託者に自由に提供資料を複製・改変されると、自らの営業秘密などの重要な情報が漏えいするおそれがあります。これを防ぐために、「受託者は、委託者の書面による承諾を得ずに、必要資料等を複製又は改変してはならない」と定めるのが有利です。

 他方で、受託者としては、提供資料等を複製又は改変しないと業務遂行ができない場合が想定されるときは、「受託者は、本契約の目的を達成するために必要な場合、必要資料等を複製又は改変できる」と定めるのが安全です。

⑵ 資料の保管義務

 委託者としては、自らの営業秘密などの重要な情報が漏えいすることを防ぐため、「受託者は、必要資料等を、善管注意義務をもって保管又は管理し、本業務以外の目的に使用してはならない」と定めるのが有利です。

 他方で、受託者としては、善管注意義務を負うと定めると、委託者から渡された資料を自社の他の書類などと同じように保管していたのに、紛失・廃棄してしまったとき、委託者に注意義務違反を理由として損害賠償請求されるおそれがあります。

 そこで、委託者から提供された資料の管理を徹底することを約束できないのであれば、注意義務の程度を下げ、「受託者は、必要資料等を自己物と同等の注意をもって保管又は管理し、本業務以外の目的に使用してはならない」と定めるのが有利です。

7. 業務遂行場所

⑴ 業務の遂行場所の指定

 1で述べたとおり、受託者は労働者と異なり委託者の指揮命令下にないので、基本的には自らの業務遂行方法を決めることができます。

 そこで、委託者としては、特定の場所でなければ業務を遂行できない事情があれば、「委託者は、委託者の指定する場所で業務を遂行するよう受託者に要求できる」と定めるのが有利です。

 ただし、受託者とその業務遂行者は、委託者の派遣労働者や直接雇用者ではないため、委託者が直接の指揮命令を行うと、違法な「偽装請負」とみなされる可能性があるため、注意が必要です。

 ここで、偽装請負とは、労働者に対して直接、指揮命令をしているにもかかわらず、形式的には請負・委任の契約を結んでいる場合をいいます。偽装請負の実態が「派遣」である場合、許可・届出がなければ違法となり、派遣を受けた者に対しても罰則があります。

⑵ 業務遂行場所の規則の遵守

 委託者としては、受託者が、委託者の事業所などで業務を行うことが想定されるときは、事業所の規則・ルールなどを遵守してもらうため、「受託者は、委託者の事業所内において業務を行うときは、業務に従事する受託者の従業員等に委託者の規則等を遵守させる」と定めるのが安全です。

⑶ 業務を行う従業員等の氏名・責任者の届出

 委託者としては、委託者の事業所内など、営業秘密を入手される恐れがある場所で業務を行ってもらうのであれば、受託者による営業秘密の不正な持ち出しを抑止するため、「受託者は、委託者の事業所内において業務に従事する受託者の従業員等の氏名及び責任者を、委託者に事前に届け出る」と定めるのが安全です。

8. 労働災害

 業務遂行中の労災事故について生じた損害をどちらが負担するかについて定める必要があります。

 委託者としては、業務遂行中の労災事故によって、委託者の財産などに被害が生じたときに、受託者に賠償請求できるように、「労災事故が生じた場合、受託者は自己の責任と負担で処理し、委託者の損害を賠償する」と定めるのが有利です。

 他方で、受託者としては、労災事故の原因が委託者の落ち度によるときは、労働者から請求された損害分を委託者に求償できるように、「委託者の帰責性により、労災事故が生じた場合、委託者は生じた損害を賠償する」と定めるのが有利です。

9. 物品の滅失・紛失時の措置

 物流過程において、物品が滅失・毀損等することが考えられます。

 委託者としては、そのような事故が生じたときは、受託者にすぐに報告してもらい、迅速に対応をすることができるように、「受託者は、物品の滅失・紛失等を発見したときは、委託者に報告する」と定めるのが有利です。また、初動の調査は受託者において行ってもらえるよう、「受託者は、前項に該当する場合、速やかに調査解明に当たり、その結果を委託者に報告する。」と定めるのが有利です。

10. 事故等発生防止義務

 物流過程において、物品の滅失・破壊等の事故が発生することが考えられます。

 委託者としては、たとえば、「受託者は、業務の遂行に要する車両の整備点検・乗務員の教育を十分に行う」と定めて、事故の発生を防ぐための措置を義務づけるのが有利です。

 他方で、受託者としては、委託者から指定されたとおりに対応する義務が、受託者によって過度な負担となることを防ぐために、「受託者は、業務の遂行に要する車両の整備点検・乗務員の教育を十分に行うよう努める」として、努力義務にとどめておくのが安全です。

11. 設備機器等の損傷時の対応

 受託者が、物流過程で、委託者の設備を使用する場合は、委託者の設備を使用しているときに、その設備が壊れるおそれがあります。

 委託者としては、このような事故が発生した場合に、受託者に対して責任を追及できるように、「受託者の故意・過失により委託者の設備機器等に損害を与えた場合は、受託者は委託者に報告し、委託者の指示に従い受託者の負担で修補する、又は委託者の被った損害を賠償する」と定めるのが有利です。

12. 業務遂行不能時の対応

⑴ 業務遂行不能時の通知

 受託者において何らかのトラブルが発生し、業務を遂行することができない、もしくは業務が遅延する事態となる可能性があります。

 委託者としては、このような場合に、早急に必要な処置をとって、損害を最小限に抑えることができるように、「受託者は、業務を遂行できない場合又は業務が遅延する場合は、委託者に通知する」と定めるのが有利です。

 他方で、受託者としては、業務が遅延する場合にまで通知及び対応を求められると負担が大きいので、通知および対応しなければならない場合を、「業務を遂行できない場合」に限定して定めるのが安全です。

⑵ 業務遂行不能時の対応に要する費用

 受託者によって業務が遂行されなかったとき、委託者は、基本的には、債務不履行に基づく損害賠償を請求することができます(民法415条1項)。他方で、受託者に落ち度がなければ、受託者は、基本的には、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことはありません(民法415条1項ただし書)。

 これらの民法上の規定の帰結ではありますが、委託者としては、「受託者の帰責性により、業務を遂行できない場合は、対応に要した費用は受託者が負担する」と確認的に定めるのが安全です。

 他方で、受託者としては、自己が損害賠償責任を負わないだけでなく、対応に要した費用負担も明確にするため、「委託者の帰責性により、業務を遂行できない場合は、対応に要した費用は委託者が負担する」と定めるのが有利です。

13. 業務従事者等に対する教育・指導等

 実際の業務に従事する従業員に対して、監督が行き届かず、適切な教育がなされていないと、期待する品質の業務を提供してもらうことができません。

 委託者としては、業務の一環として、「受託者は、自らの従業員に対して、教育、指導及び監督を十分に行う」と確認的に定めるのが安全です。

14. 業務従事者等の変更

 前述(1.業務遂行方法の改善)のとおり、受託者は基本的に自らの業務遂行方法を決めることができるので、受託者は、どの従業員を委託業務に担当させるかを決めることができます。もっとも、顧客からクレームが入ったときは、さらなるクレームの発生を防ぐために、担当者を変更する必要があります。

 委託者としては、このような場合に備えて、「委託者は、本業務に従事する受託者の従業員等に関して苦情があった場合、調査を行い、人員の交代を受託者に要求することができる」と定めるのが有利です。

 他方で、受託者としては、委託者から従業員の変更を要求されたときに必ずこれに応じる義務が定められていると、受託者の事業活動に支障をきたすおそれがあります。そのため、「委託者は、本業務に従事する受託者の従業員等に関して苦情があった場合、調査を行い、人員の交代を受託者に要求することができ、受託者は事業に支障のない範囲で応じる」と定めるのが安全です。

15. 労務管理

 基本的には、受託者は、自らの業務の遂行方法を決めることができますが、受託者の従業員が過重な労働等を強いられることにより、業務中に事故を起こすなどして、業務の遂行に支障をきたすリスクがあります。

 委託者としては、これを防ぐために、「受託者は、業務に従事する従業員等に対する労務管理の適正化を図り、労使間の紛争防止に努める」と定めるのが安全です。

16. 設備・備品等の制限

⑴ 設備・備品等の持ち込み・変更の制限

 受託者が、自由に設備・備品等を作業場所に持ち込んで使用すると、不適切な備品であったときに、他の物品が壊れるリスクがあります。また、受託者が、委託者に断りなく設備・備品等を変更することで、業務の品質が低下するリスクがあります。

 委託者としては、これを防ぐため、「受託者は、委託者の承諾を得ずに、業務を遂行する作業場所に、自らの設備・備品等を持込み、又は既設の設備等の変更をしてはならない」と定めるのが有利です。

⑵ 委託者の請求による設備・備品等の撤去

 受託者が、委託業務の遂行において不適切な備品等を使用している場合には、委託業務の遂行の障害となるおそれがあります。

 委託者としては、このような場合に備え、「委託者の承諾を得て受託者が搬入又は設置した設備・備品等でも、委託者は受託者の費用にて移動又は撤去を求めることができる」と定めるのが安全です。

⑶ 契約終了時の設備・備品等の撤去

 業務を遂行するにあたって受託者が設備・備品等を持ち込んだときは、契約終了後、それらがそのまま放置されると、委託者が撤去するコストを負担しなければなりません。

 委託者としては、これを防ぐため、「受託者は、本契約が終了したときは、受託者が搬入又は設置した設備及び備品等を直ちに撤去する」と定めるのが有利です。

17. 立入検査

 基本的には、委託者は、受託者の物流センターや事業所に無断で立ち入ることはできません。

 そこで委託者としては、受託者の業務遂行状況を適切に把握するために、「委託者は、業務の遂行状況を確認するため、受託者の事業所内等に立ち入り、検査することができる」と、受託者の承諾なしに立入検査できる旨を定めるのが有利です。

 他方で、受託者としては、委託者に無断で立ち入り検査されると、営業秘密などが流出し、不利益を被るリスクがあるため、このような定めは削除するか、削除が難しい場合は、「受託者の同意」を条件とするのが安全です。

18. 保証

 受託者が、業務を行うために必要な各種登録、許認可を取得していなかった場合、業務の遂行が不可能となったり、業務の遂行に支障をきたしたりするリスクが高まります。

 委託者としては、これを防ぐため、「受託者は、委託者に対し、業務を行うために必要とされる官公庁脳登録、届出、許認可等を取得していることを保証する」と定めるのが安全です。

19. 損害賠償保険

⑴ 損賠賠償保険を付する義務

 業務の履行中に、物品の破損・滅失・盗難が発生し、損害が発生した場合に備えて、損害賠償保険について定める必要があります。

 委託者としては、受託者に、受託者の負担で委託者が適切と認めた損害賠償保険に加入してもらえるように、「受託者は、委託者が認める適切な損害賠償保険を自己の負担にて付する」と定めるのが有利です。

 他方で、受託者としては、委託者の負担で、委託者に損害賠償保険に加入してもらえるように、「委託者は、損賠賠償保険を自己の負担にて付する」と定めるのが有利です。

⑵ 保険証の写しの交付

 相手方に損害賠償保険を付する義務を課す場合、相手方が確実に損害賠償保険を付していることを確認するためには、相手方に保険証の写しを交付する義務を定める必要があります。

 そこで委託者としては、「受託者は、付した保険の保険証の写しを委託者に交付する」と定めるのが安全です。

 他方で、受託者としては、「委託者は、付した保険の保険証の写しを受託者に交付する」と定めるのが安全です。

⑶ 保険の変更・解約

 相手方に損害賠償保険を付する義務を課す場合、相手方が損害賠償保険を勝手に変更、又は解約し、実際に損害が生じたときには十分な補填がなされないリスクがあります。

 そこで委託者としては、「受託者は、保険契約を変更、又は解約する場合は、事前に委託者の承諾を得る」と定めるのが安全です。

 他方で、受託者としては、「委託者は、保険契約を変更、又は解約する場合は、事前に受託者の承諾を得る」と定めるのが安全です。

20. 受託責任範囲

 責任範囲が明確に定められていない場合、受託者としては、通常受託した配送業務の範囲外と思われる業務中に発生した事故についてまで、債務不履行責任(民法415条)を負わされるリスクがあります。

 これを防ぐため、受託者としては、「運搬指示書の受領時から配送完了後の委託者への報告書提出時までが業務の範囲である」等と責任範囲を限定して定めるのが安全です。

21. 受領書等回収義務

 配送業務を委託する場合、配送先から納品されていない等のトラブルが発生することが想定されます。

 このようなトラブルを防ぎ、必要な場合には確実に納品されているかを確認できるよう、委託者としては、「受領者は、委託者の納品先から受領書を受け取り、委託者の指示を受けた場合には委託者に提出する」と定めるのが有利です。

22. 配車

 配送業務を委託する場合、配送に使用する車両や乗務員によって、業務の品質が低下するリスクがあります。

 このようなリスクを防ぎ、業務の品質を維持するために、委託者としては、「受託者は、委託者の指定に基づいて配車する」「受託者は、委託者が指定する規格の車両を使用する」「受託者は、業務の遂行に関わる車両、乗務員を委託者に報告し、委託者の承諾なく変更してはならない」等と定めるのが有利です。

23. 車両の故障時の措置

 配送・荷役業務を委託する場合、車両の故障・交通事故などが発生するリスクがあります。

 このような事態に備えて、委託者としては、「受託者は、車両の故障・交通事故等により、物品の滅失等が発生した場合は、委託者に通知し、調査解明に当たり、その結果を委託者に報告する」と定めるのが安全です。

24. 運送指示の急遽変更に対する対応

 配送業務を委託する場合は、商品のボリューム変動、降雪等の悪天候等により、委託者から受託者に対して、特別な対応を指示する必要が出てくる可能性があります。例えば、強風が懸念される場合、横転可能性の低い車両を配置するよう受託者に求める、といったことが考えられます。

 このように、受託者に協力を求めることができるよう、委託者としては、「悪天候等の事情によって緊急対応が必要な場合、受託者は委託者に協力する」と定めるのが安全です。

25. 入庫業務

⑴ 入庫業務

 委託者としては、入庫業務を委託する場合、入庫業務に関する受託者の義務を明確に定めるのが安全です。

⑵ 入庫予定データとの相違の有無の確認義務

 委託者としては、入庫予定となっていた物品とは異なった内容の物品が入庫されることを防ぐため、「受託者は、入庫業務の対象となる物品の数量、種類、内容について、委託者の作成した入庫予定データと相違がないかを確認する」と定めるのが安全です。

⑶ 入庫予定データと相違がある場合の対応

 入庫予定データと相違がある物品について、他の物品と同様に入庫されてしまうと、委託者の業務に支障をきたすおそれがあります。

 そのため、委託者としては、入庫された物品が委託者の作成した入庫予定データと異なる場合に備えて、「納入された物品について、入庫予定データと相違がある場合、委託者の承諾なしに入庫してはいけない」と定めるのが安全です。

⑷ 物品に汚損等の異常がある場合の対応

 委託者としては、汚損等の異常がある物品を、他の物品と同様に入庫されてしまうと、後からそれらの物品を排除するのがより困難になります。そのため、「納入された物品について、汚損などの異常がある場合、又はそのおそれがある場合、委託者の承諾なしに入庫してはいけない」と定めるのが安全です。

26. 在庫差異責任

 棚卸業務を委託する場合、在庫差異(実際の在庫と、帳簿上の在庫が整合しない事態)が生じたときの対応を定める必要があります。

 委託者としては、在庫差異が生じたときに、受託者に責任を追及できるよう、「一定の割合以上の在庫差異が生じた場合、受託者は損害賠償責任を負う」と定めるのが有利です。

27. 返品回収業務

 返品回収業務を委託する場合、返品回収業務に関する受託者の義務を明確に定める必要があります。

 委託者としては、返品回収業務を委託する場合、「受託者が、対象物品の種類及び数量を、納品先立会いの下で確認して、間違いのないように運搬する義務」を定めるのが安全です。

 実際の返品数量と帳簿上の誤差が生じた場合に備えて、「受託者は、誤差が発生した場合は速やかに委託者へ報告する」等と定めることも考えられます。

  • 以上、物流委託契約書の書き方についてポイントをまとめました。これから契約書作成を行う際は、ぜひ参考にしてみてください!

もし作成に不安があれば、問い合わせください。